キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

年功序列、終身雇用の終わり

「キャリアコンサルティング」(丸山)は、年功序列、終身雇用を特徴とする人事制度が転換される最中に書かれた本。企業と働き手の関係の変質が鮮明にクローズアップされた時期に書かれたものです。

年功序列、終身雇用からの転換は、キャリアコンサルタントの教科書でも随所に目にします。キャリア自律、エンプロイアビリティといった言葉は、転換後の雇用の方向性を示すもの。一つの会社で勤めあげるのが終身雇用、年功序列が当たり前だったころの常識であり、転換後の現在は、それが当たり前ではないのが常識です。キャリアコンサルティングに期待されるのは、個人のキャリア自律を支える、エンプロイアビリティの向上を支援すること。それは90年代から現在まで、様々に議論されて来ている大きな流れなのです。


この、年功序列、終身雇用の終わりはとても影響範囲が広い。

「フィードバック入門」(中原)は、人材育成のフィールドで、その影響に触れています。

OJTのような現場を中心とする人材育成のフィールドでは、今、ひとが育たなくなっている。それはなぜか? かつては特に人材育成ということを気にする必要はなく、勤続年数と社員の成長は比例していた(と考えられていた)。

こういう問いは、世代論でよく説明されたりしました。昔の人間のほうがよく働いた、やる気が高かった、覇気があった、とか、なんとか。今はあまり口にする人の方が少ないと思われますが。働き方改革、ハラスメントなど、かつての世代の常識がひっくり返される現在ですから。

中原によれば、かつて人材育成があまりクローズアップされる必要がなかったのは、年功序列、終身雇用が当たり前だったから。端的にまとめると、部下が上司の背中を見ていればよかった。上司のやり方を身につければ、自分も家が買え、車が買えた。

今はそうはいきません。

なんだったら、上司がエクセルの行列も理解していないのに、部下がマクロを使いこなしている、統計も使える。

上司に求められることも変わっていて、単に、自分のやり方や経験で部下を指導、育成できなくなっている。

中原はかつてコーチングが管理職研修として流行ったことにも触れています。どうもコーチングの取り入れ方がまずかったのではないか? 部下に気づかせることが大事だと思い込んでしまった、それにより、部下に不味い点を指摘しない上司が増えたんではないか?

指摘すべきことは指摘して、部下の課題を明確にし、それをいっしょに解決する手法がフィードバックということなのですが、フィードバックという手法が目指すところも、自律的人材の育成です。でなければ、わざわざ年功序列や終身雇用に触れる必要もありません。

一方、上司の立場に目を向けると、上司は自分の経験だけに頼れなくなっている。それを客観的に整理し、自分自身を振り返ることも求められている。こうしたサポートもキャリコンがアプローチしていくところかと。