キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

サビカスによるキャリア支援の整理

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サビカス理論の背景には、グローバル化、情報技術の進展によるキャリアのありようの変化がある。

会社は個人のキャリアを保障しなくなり、キャリアをどのように発達させていくかは個人の責任に委ねられるようになった。

このような変化を踏まえ、サビカスはキャリア支援のありようを整理している。

かつて、キャリアカウンセリングと同じものと見られていた職業ガイダンスやその一部と捉えられていたキャリア教育とは、キャリアカウンセリングは明確に区別されるものとなった。

それぞれがキャリア支援として果たす役割、機能、期待される効果を整理し体系づけられた。


ではキャリアカウンセリングの役割とは何か。

それは、クライアントのキャリアの創造だと考えられる。

冒頭述べたように、私たちは自身のキャリアに対し、個々に責任を持ち、管理していく必要がある。一方、状況は目まぐるしく変化しづけている。私たちは、不安定で、不規則な就業環境で働いているのであり、そこでは、直線的に階段を上っていくようなキャリアは想像し難い。エンプロイヤビリティを意識しながら、生涯学習を継続し、自己のリニューアルを図っていかなくてはならない。そのためには、自己のリソースを丹念に点検していく作業が必要である。クライアントが自身の経験のうちにどのようなリソースを蓄積してきているのか、それは、転機に際し、新たなキャリアの可能性を切り開くものなのか、その点をはっきりさせておく必要はあるだろう。

アセスメントは、これまでも、検査やテストという形で行われてきた。そこには、差異心理学の貢献も大きい。職業興味検査や作業検査、性格テストなど、様々に開発され、利用されてきた。その有効性は現在でも否定されるわけではないし、特に採用する側にあって有用な道具である。こうした統計的に一般化することが便利なのは、それは比較を可能にするからだ。

私たちの組織は、検査結果から、すでにその組織に所属しているひとを同一の物差しで並べることは可能であり、かつ、合理的だと考える。そこで働いているのは類似性という論理だ。あてはまる、ややあてはまる、どちらともいえない、あまりあてはまらない、まったくあてはまらない、といった五件法のような方法で測定されるのは、どの程度似ているのかということなのだ。そこではクライアントは演技者としてふるまうことが要請される。

それに対し、キャリア教育においては、クライアントはエージェントとしての振る舞いが予定されている。突きつけられる課題を克服し、各ステージを主体的にクリアしていくが、課題の克服には克服できるだけの準備が整っていなくてはならない。課題はライフサイクルとも関連することには留意しておく必要がある。

職業発達理論の主要な課題は、キャリアにおける自己実現である。それは、終身雇用を前提に考えるとわかりやすい。あるいはシャインのキャリアコーン。


職業選択も、職業発達も、現在、効果を失ったとか、意義を失ったとか、ということではない。これらは今ニーズがあり、社会的要請も高い。現代のキャリアの特徴は、終身雇用という大きな物語の喪失である。そのために、個人一人ひとりか自らのキャリアストーリーを作り上げる必要がある。そのための理論がキャリア構成理論であり、そのための手法がキャリアカウンセリングである。

キャリア構成理論は社会構成主義に、キャリアカウンセリングはナラティブ心理学に依拠する。社会構成主義にも、ナラティブ心理学にも共通するのは、現実は言語によって作られるという信念だ。つまり、現実は社会的現実として、人びとの折衝を通して構成される。アイデンティティはまさに社会的現実そのものだと考えられる。


サビカス キャリア・カウンセリング理論

サビカス キャリア・カウンセリング理論

  • 作者: マーク・L・サビカス,日本キャリア開発研究センター,乙須敏紀
  • 出版社/メーカー: 福村出版
  • 発売日: 2015/07/02
  • メディア: 単行本
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