キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

姿勢が良ければクライエントは語る

先日の面接対策で、非常に印象的だったことがあります。

カウンセラーがクライエントに問いかけに対して、クライエントが、そうではなくて、とカウンセラーの問いかけを修正しながら応えていく。そこで話が進んでいく。そのようなロープレを見ました。

カウンセラーの問いかけは確かにクライエントがその前に語ったこととはズレていたんですが、クライエントがそのズレを修正しながら、さらに話を深めていく、その進み具合が私にはとても不思議に思え、フィードバックの時間に率直に今書いたことを話しました。

カウンセラー役の方自身が話すことを聞いて、その微妙なズレは意図してそうしていたのではないことはわかったのですが、だとすると、クライエントはカウンセラーの意図とは関係なく語りを深めていたことになります。なぜ、クライエントは語るのか?


フィードバックのとき、撮影されたロープレのビデオを見ていくのですが、そこで、気づいたのは、最初のほうで、カウンセラーがクライエントの発話を待つ場面がありました。10秒くらいでしょうか。ただ、カウンセリングで、この10秒の間は、わりと長く感じられるものでした。私が思ったのは、このクライエントの発話を待つ間が、そのあとの展開にとても効果的だったのではないかということです。

そのとき、クライエント役の心理がどのようなものであったかは確認できなかった(ホルダーの方で先に帰られたため)のですが、カウンセラー役の姿勢には、クライエントの言葉を待つということのほかにも、視線の合わせ方、顔の表情、身体姿勢、応答、話し方にクライエントへの気づかいが表れていました。つまり、クライエントにとっては、自分の話を一所懸命に聴こうとするひとを前に、話をする気持ちへとうながされたのではないかと考えられます。

カウンセラー役の方の応答に意図はなかったかもしれませんが、その応答の働きは、いいかえの技法に近いものとも思えます。クライエントのいったことの内容をとらえ、それを表現を変えて伝え返すのがいいかえですが、その伝え返された表現がクライエントにとっては自分のいいたいことと微妙にズレていたため、その修正をしながら話しを続けていくことになったのではないか?それは微妙なズレを修正するなかで、自分がいいたいことを考え直す、そんなプロセスが働いていたんではないだろうか?

私はいいかえはあまり得意ではなく、そのため使ったことはありません。それはクライエントがいいたいこととズレてしまうのがこわいから、なんです。ただ、今回、感じたのは、ズレを中心に効果的にカウンセリングを進めていく可能性もあるんだということです。そして、それはカウンセリングとして正解なんだと思います。

クライエントの表現を通して、クライエントの世界を理解していくプロセスで、必ず、カウンセラーとクライエントとの言葉のズレはもともとあるものです。カウンセラーとクライエントはそれぞれ個人として存在し、それぞれに独自の経験を持ち、現在の価値観や信念を作り上げてきた生活史がある。物事への対処の仕方もそれぞれであり、言葉の使い回しもベースのところでは独自のものです。クライエントがある表現を通していいたいことはカウンセラーが受け取った意味とは違う。であればこそ、クライエントの表現に対しカウンセラーは自分の理解の正しさをクライエントに確認することがどうしても必要になってくる。その確認の方法としてリフレクションがあるんだけど、その技法はクライエントにとってはミラーリング効果を生む。いま、カウンセラーが話したことって、自分がいいたかったことだっけ?と自問自答する。

いいかえは、クライエントが使った表現をそのまま返すのではなく、カウンセラーが受け取ったことをカウンセラーの表現を使って返す。だとすると、クライエントは違和感を感じながら、より正確に自分の心情を表現しようとするのではないか?