キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

経験代謝について メカニズムと条件

経験代謝は、まず、技法ではありません。それはキャリアカウンセリングによって生起すると想定される相談者の心的過程です。また、その組み上げられてきた研究過程を確認すると、数多のキャリア理論やカウンセリング理論をキャリアカウンセリングの実践を積み上げによって経験的に蒸留されてきたものです。したがって、経験代謝も臨床の知の1つに数え上げられるでしょう。

経験代謝が相談者の心的過程だということは、その説明の中でメカニズムと表現されていることからわかります。そして、このメカニズムが作動するには一定の条件が必要であることも示されています。

このメカニズムと条件ということからは、経験代謝には必ずしもキャリアカウンセリングを必要としないということも示されています。つまり、経験代謝は、条件さえ整えば、作動するものなのです。このことは、経験代謝が経験から学ぶ構造だということからも理解できます。経験から学ぶことは、人間誰でもやってることです。幼児が言語を習得する過程、修羅場を体験することで一皮向ける、トレーニングを積んでスキルを体で覚える。そう考えると、経験代謝とは認知発達として取り上げられるもので、ひとが生きていくなかで、つねに起きているものです。つまり、キャリアの主題に限らず、教育や臨床心理など発達をテーマとするところで、広く散見されるものです。


例えば、現在、学校教育で話題のアクティブラーニング。社会人研修でのワークショップ。それらの場で説明に使われることが多いコルブの経験学習。そのプロセスは、経験代謝のプロセスとも重なります。


キャリアカウンセリングで経験代謝が着目される理由は、キャリアカウンセリングの目的と重なります。


キャリアカウンセリングの目的は、環境への適応、成長の促進だと私は思います。いずれも自己の理解が前提です。この自己理解を進めるプロセスとして経験代謝のメカニズムを採用することで、キャリアカウンセリングの成果がより高められると期待されるのです。


キャリアカウンセリングの成果とはなんでしょう? それはより良い生活、生涯だと私は思います。ただ、より良いという実感は人によりさまざまです。こうした個別性も考えると、なおのこと、経験代謝のメカニズムはキャリアカウンセリングにおいて不可欠なものだと考えられます。


キャリアカウンセリングにおいて経験代謝は、キャリアコンサルタントが面談で心がけることを示唆してくれます。端的に、キャリアコンサルタントは相談者にその経験代謝のメカニズムが作動する意図をもって働きかけます。そのために、キャリアコンサルタントは、経験代謝のメカニズムが作動する条件を熟知しておく必要があります。ただ、それはあくまで作動する条件であって、条件はスイッチではありません。


いくつかの条件があります。

信頼関係の構築は、その条件のひとつであり、不可欠なものです。