キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

アドラーに学ぶ対人関係の理論と技法

アドラーは、フロイトユングとよく比較されますが、一番大きな違いは日常の言葉で、自分の心理学を語ったことではないかと思います。フロイトのイド、ユングのアニマといった表現をアドラーはしませんでした。もちろん、アドラー心理学にも特有の用語はあります。が、それはギリシャ語など普段使わない言語から転用するようなことをアドラーはしなかったのです。これは、精神科医、心理学者、教育者としてのアドラーを理解するためには決定的に大事なことだと思います。相手は誰か、個人心理学を学ぶ相手への配慮、アドラーが普段使ってる言葉で語っているのほそのためではないかと。

アドラーの言葉からは、いつも、共感を伝えようとする姿勢が感じられます。日本語だとそのあたりのニュアンスが伝わりにくいのですが、英訳だと非常にシンプルな言葉で語っていたことがわかります。

これはもちろん、アドラー心理学の中核概念である共同体感覚につながっています。

共同体感覚についてアドラーはいろいろな言葉で語っていますが、私はシンプルに、幸福な対人関係のことだと受け取っています。自分が自分らしさを感じつつ、他者と信頼関係でつながっている、それが幸福な対人関係ではないか、そう考えます。人間は社会の中でしか生きていくことができません。完全に自分一人で生きていくことは想像を絶するほど困難です。道を歩くことから私たちは他者の仕事の恩恵を受けています。私たちの生活は、すでにさまざまな人々の仕事の成果で成り立っています。幾重にも錯綜し重なり合う人間関係の網目の中で、私たちは生活しています。一方で、この人間関係の網目は不幸の苗床とも言えます。人間の悩みは対人関係の悩みだとアドラーは指摘します。しかし、そこに幸福を見るのか、不幸を見るのかは、実は自分次第なのです。言わば、対人関係を幸福にするのも不幸にするのも自分の見方や行動次第なのです。そして、見方や行動は変えることができる。アドラー心理学は、不幸な物の見方や行動を幸福を産み出す見方、行動に変えるための理論であり、かつ、技法です。


アドラー心理学はキャリアコンサルティングにも大いに役立ちます。実際、サビカスはアドラー心理学の早期回想という技法を応用しています。というのも、アドラー心理学は元々生き方そのものを対象としているからです。職業紹介・指導だけでなく、生活全般、生き方そのものへとキャリアコンサルティングの活動は広がって来ています。アドラー心理学を取り入れることで、キャリアコンサルタントにはクライアントの職業領域にとどまらない領域にまで踏み込むことになります。