伝え返しのポイント
面談では傾聴はとても大事だということは、みなさんおっしゃるところですが、では、実践的にどのようにみにつけていけばいいのかは講師によって言うことが違い、迷ってしまうこともおうおうにしてあります。
私が指導していただいたことは、非常にシンプルでした。
促す→聴く→伝え返す。
このサイクルを回すこと。
促すというのは、うなづき、あいづち、視線を合わせる、身体を相手に向けるなどのかかわり行動のほか、相手を名前で呼ぶや「今日はどのようなご相談でお見えになられたんですか?」といった、会話へ誘うための質問や、「それ、何かあったんですか?」といった開かれた質問も含めています。相手に心ゆくまで話してもらうためのかかわりが、この促す。
そして、相手が話すことを聴く、とにかく、聴く。
その次に、関心がある、理解している、共感していることを相手に伝えるために、聴いたことを伝え返す。
このような働きかけをしていくことで、面談は進んでいく。
と、書くのは簡単ですが、まあ、なかなかうまく実践するのは難しい。
養成講習でのロープレで、「事柄ばかり拾ってますね」、「感情も、ちゃんと拾ってください」と何人かの講師に指摘されました。
ただ、その指摘って、正直、なかなか、ピンとこなかった。
また、別のときのロープレでは、「あなたは要約がうまいですね」と褒められた。ただ、自分では、今ひとつ、そう感じられない。
私のロープレはうまくいったときといかなかったときが、割とはっきりしていて、その反応はたいてい、上に書いたとおりでした。
うまくいったときは、要約がうまいと褒められ、うまくいかなかったときは、事柄ばかり拾う。
褒められるときは、ほとんど、私はうなづいていることが多い。クライエントがずっと話していて、私は聴いていることのほうが多い。そして、タイミングを見て、話のまとめると、それを受けて、クライエントが「そうなんですよね、」といって、また、話し続ける。
事柄ばかりのときは、質問ばかりで、かつ、半分以上、私がしゃべっている。クライエントの話が続かないため、質問して、なんとか、しゃべってもらおうとするんだけど、ひとことふたこと話して終わり、そこに焦って、また、質問するという悪循環。
この違いは、なぜ生じるのか?
はっきりとした答えは、まだ、持っているわけではないんですが、クライエントによるのかなあと思っていたところはあります。確かにそれは否定はしません。相性はあると思います。ただ、プロだとそんな言い訳通用しませんよね。
今、考えられるひとつの理由は、クライエントの言葉を伝え返していない、ってことがあります。
「なんかずっとモヤモヤしていて」
「何かあったんですか?」
「なんかずっとモヤモヤしていて」
「ずっとモヤモヤしている、それ、なにかあったんですか?」
この「ずっとモヤモヤ」を返すかどうかの違いが面談じたいを大きく左右するように感じます。初回面接であればこそ、クライエントの第一声は、丁寧に返す必要があります。それにより、クライエントにあなたを受け止めますよと伝えることができるからです。
面談が進むと、話の流れやタイミングによって、何を伝え返すのかの幅も広がってきます。その選択によって、話の流れも変わります。言葉を返すのか、話を要約して返すのか、話から想定されるクライエントの気持ちを返すのか、など、いろいろな返しはあります。
間違うことを怖がらないで、クライエントがこのように考えているだろう、感じているだろうと思われることを伝え返すのです、そう指導されたことがあります。
「今お話をお聞きして、すごく理不尽だと感じられていると、私は思いました」
「理不尽・・・、そうじゃなくて、納得いかないって感じかなあ」
間違っていたら、クライエントが修正してくれます。それだけクライエントの世界が開かれてきたということなのですから。怖がって、返さないとしたら、そのほうがクライエントの世界に入れていない。ということになります。