キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

経験代謝について

JCDA関連の養成機関のため、キャリアカウンセリングの基礎として経験代謝について教えられる。

基礎実習でも、経験代謝については触れられていたが、応用実習では演習を通じて体感的に身につけていくことが期待される。

カウンセラーによるかかわりによって、クライアントは経験の再現から意味を見出し、その意味の実現に向けて行動していく。

この意味は自己概念と言い換えられる。クライアントは、経験の再現によって自己理解を深め、自己概念を見いだす。


このプロセスじたいは、ロジャーズの自己一致である。ロジャーズは、クライアントはカウンセリングによって、自己不一致の状態から自己一致の状態へ変化すると述べている。そのための条件としては、自己一致していること、クライアントを受容すること、共感的理解をとることをカウンセラーに求め、さらにそのようなカウンセラーの態度がクライアントに伝わっている必要がある。

ロジャーズのいうカウンセリングの条件は、経験代謝にもカウンセラーに求められる態度である。また、経験代謝は、自己概念の成長を目指すことを目的としていて、そこにもロジャーズの考えに近い。


ところで、ここで言われている経験は、ごく日常の出来事であってもよい。どんな出来事であろうと、出来事じたいに意味があるのではない。大事なのは、その出来事をクライアントがどのようにとらえているか、クライアントが出来事に対して抱く考えや気持ちを含めて、それが経験なのだから。

認めたくない事実、なかったことにしたいこと、目を背けたくなること、そのような出来事に目を向けることは不安を喚起することにもつながる。だが、そうした出来事を直視することから学びが生まれる。とはいえ、直視するには相応のエネルギーが必要だろう。不都合な事態にあっても、それを自らなんとかしようとする場合、ひとは当事者意識をもっている。逆にいえば、当事者意識がないと、その出来事は自分が対処する出来事にはならない。他人事である。経験代謝は、他人事としてとらえている出来事に対して、当事者意識をもって取り組むことを促す。他人事と自分事を分けるのは、当事者意識の強さではないかと思われる。それを強めることが経験代謝に期待されることだと思われる。


勝手にいろいろと思考を巡らせたが、経験代謝はJCDAが提唱しているものである。この点は決定的に重要だと思われる。つまり、これはキャリアカウンセリングの理論であって、カウンセリングの理論ではない。キャリアカウンセリングの実践のために考えられたものであり、キャリアカウンセリングにはカウンセリングや心理療法とは異なる独自の版図がある、ということになる。ただし、経験代謝も、実践のなかで整理されてきたものである。経験の再現から意味の出現、意味の実現というプロセスを辿ることができるのであれば、どんな技法を使ってもよい。エンプティチェアでも、ミラクルクエスチョンでも、コラム法でも、何を使おうが制限はない。ただ、経験代謝のサイクルを意図し、クライアントの自己概念の成長が促されるかどうか、そこが問題。