ジョハリの窓からカウンセリング関係を考える
「〇〇さんはご出身はどちらですか?」とクライアントがキャリアコンサルタントに質問した場合、どのような応答が考えられるだろうか?
要は、よって立つカウンセリングの理論によって具体的な応答の仕方や中身は異なるのだろうと考えるからだが、ときに、
「あなたは私の出身が気になるんですね」と解説されていることを見かけることもある。
クライアントから発せられる質問に対して、こう聞かれればこう応えるというマニュアルめいたものは、そもそもありえない。上記のように、質問の内容をそのまま返すというのも、それが正解なのかどうかは、発せられる質問の言葉尻だけでは決められない。キャリアコンサルタントとクライアントとの関係性、話の流れ、コンサルティングの進捗具合など、様々な変数が絡んでいる。要は、キャリアコンサルタントの応答が、クライアントの次の発話を選択させることはいうまでもないが、訊かれたから応える、ということではなく、クライアントが質問してくる、その動機をキャリアコンサルタントは想定し、自分の応答がクライアントとの関係にどう影響するかを考え、また、受けた質問をキャリアコンサルタント自身がどう受け止めているのかにも注意し、応答を返すことが大事なんだろうと思われる。
キャリアコンサルタントは、クライアントに対して、どこまで自己開示するのだろうか?
信頼構築がキャリアコンサルティングのベースです、とは、確かにそうなのだろうが、その信頼関係は、専門家と相談者という関係に限定され、そこで話されるテーマについてのみという限定つきなのだと思われる。
ところで、心理学では、相手が自己開示する程度に自分も自己開示することを互酬性と呼ぶ。とすると、一方的に自分の問題を開示することだけでなく、目の前のキャリアコンサルタントにも話してもらいたいという心理がクライアントに働かないとも限らないし、逆にキャリアコンサルタント自身が自分のことを話したくなるということもあるのだろう。
コミュニケーション一般ということから考えると、相互理解の範囲を広げていくことが信頼を深めていくことにつながるのかもしれない。だが、カウンセリングでいう信頼は、それとは違う、と考える。
ジョハリの窓でいえば、カウンセリングでは、クライアントが自分では気づかないことをフィードバックすることはもちろん、未知の自己に気づいてもらうことが大事だと思う。そこが、日常のコミュニケーションとの大きな違いなんではなかろうか。