計画的偶然性について
井上久男氏の『会社に頼らないで一生働き続ける技術』には、40歳代前後で、大手自動車メーカーやメガバンクを飛び出し転職、起業したひとたち、自営業から農業などの事業転換を試みたひとたちの豊富な事例が取り上げられている。
この本の背景にあるのは、柳川東大教授の40歳定年制と「計画的偶然性」だ。柳川教授は別の機会ということで、「計画的偶然性」を活用するための要件を、井上氏は「仕事のプロ」という言葉にまとめている。氏によれば、「仕事のプロ」とは、「社内外に豊富な人脈を持ち、業界の中でも一目置かれる実績を出している人」をいう。プロを志向し、プロとしての意識を持ち、実践を重ねていくことで、偶発的な機会をものにすることができる。ひいては、それが「生涯現役」へとつながっていくというのが、この本の主張の一つである。
この本は、「計画的偶然性」の事例集とも読める。
結果がわからないときでも、行動を起こして新しいチャンスを切り開くこと、偶然の出来事を活用すること、選択肢を常にオープンにしておくこと、そして人生に起きることを最大限に活用すること(『その幸運は偶然ではないんです!』,J.D.クランボルツ, A.S.レヴィン)
こうだったらいいなあと思い描く将来が実現できるかどうかはわからない。不確実だ。不確実ではあるが、その実現確率を高める方法がないわけではない。動いてみないとうまくいくかどうかはわからない。成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。あるいは、チャンスはいつやってくるかわからない。明日訪れるかもしれないし、10年経っても巡ってこないかもしれない。ただ、はっきりしているのは幸運は行動しないとやってこないということだ。
想定外の出来事は、あるいはキャリアの幸運は、行動によって引き起こされる。
バンデューラの社会的学習理論を下敷きに、クランボルツのいう行動は学習とイコールでもある。
- 好奇心:新しい学びの機会の模索
- 持続性:失敗にくじけない。努力し続ける
- 柔軟性:目標にこだわらない。状況の変化にうまく対処する
- 楽観性:新しい機会は必ずやってくる。それを自分はつかめると信じる
- リスクテーキング:結果の見通しが立たなくても行動を起こせ