キャリアコンサルタント学習ノート

キャリアコンサルタントの学習記録

キャリアコンサルタントのカウンセリングって

現在の受講先を決める際、営業担当から、

「カウンセリングの実習は来談者中心療法ですから」と聞いていて、しばらく頭に引っかかりがあった。

そこで、機会があったので、キャリアコンサルタントの先輩にたずねてみた。

「ロジャーズのいう、受容、共感的理解、自己一致は大事だと思うのですが、それだけでキャリアコンサルタントは務まるもんなんですか?」

即答だった。

「つとまりません」

キャリアコンサルタントもひとの成長に関わることは確かだが、キャリアの問題は具体的な解決が求められるものだろう、と思う。もちろん、クライアントとのかかわりにおいて、安心して自己開示ができる場を設定することは何はさておき求められるものであり、その点でロジャーズが提唱するところは非常に重要だ。ケースによってはそのようなクライアントを受け止めるというかかわりで十分なこともあるだろう。

ただし、キャリアというテーマで具体的な解決が求められるケースにおいて、キャリアコンサルタントは情報提供もするし、自己開示もし、指示をすることもあるだろう。でないと、クライアントから疑問を持たれてしまうのではないか。先の先輩の言葉は私が感じていたモヤモヤをサッパリ切り離してくれた。


その方は、精神疾患を持った方の就業支援をされているとのことだったが、自ら、雇用先へ就職を頼みに行くこともあるらしい。そうした雇用先の開拓も自分の仕事なのだという。キャリアコンサルタント以外にも、精神保健福祉士としても活躍されている。

クライアントの問題解決のために、今、自分ができることをやればいい、行動を理論で縛ってはいけない、と言っていたのは河合隼雄だ。

この先輩は、まさに河合先生の言葉通りだと感じた。

カウンセリングのモデルについて

カウンセリングをどのように進めていくかについては、現在、さまざまな理論家が提案するモデルが存在する。

もともと、さまざまな流派が存在していたところ、ほんとうに心理療法は効果があるのか?という懐疑に対して実証的な検証がなされたことを背景に、各流派の折衷的、統合的な試みが行われてきている。

このような折衷的、統合的な試みを代表するものとして、知る限り、3つのカウンセリングのモデルが存在する。これらのモデルは、カウンセリングの初学者に対しての教育に使われたりしている。その3つとは、マイクロカウンセリング、ヘルピング、コーヒーカップ方式。キャリアコンサルタントの教科書にも出てくる。

マイクロカウンセリングは、1つ1つの技法を階層化で整理している。なので、トレーニングも、技法をひとつひとつ、学んでいく手法をとる。カウンセリングのメタモデルとも言われる。

ヘルピングは、援助関係の一般化の考えにより、カウンセラーとクライアントという関係性をより抽象化している。援助するひとは、援助されるひとでもある。援助関係において、援助するひとはどのような接し方をするのか、援助されるひとにはどのような心理的変化が起きるのかをプロセスとして整理している。

マイクロカウンセリングも、ヘルピングも、精神分析や来談者中心療法、行動療法など、さまざまな心理療法の思想や技法を組み合わせ、こねて、まとめあげられている。

コーヒーカップ方式は國分康孝博士により、創案されたもので、カウンセリングが進むにつれ、クライアントの内面化が深まり、あらたな行動として外面へと向かう図式が、コーヒーカップの切断面にちょうどなぞらえられることからその名がつけられた。


マイクロカウンセリングが技法の体系化という印象が強いのに対し、ヘルピングとコーヒーカップ方式は内面化と行動化という要素により着目したモデルだという印象を受ける。

さらに、コーヒーカップ方式も考え方としてヘルピングと同様、援助関係をより広く捉えようとしている。


カウンセリングをスキルとして習得しようとする場合、これらのモデルは確かに有意義に機能する。特定の心理療法によらない形で、トレーニングを行い、チェックすることができる。心理療法は臨床心理学と一体であり、カウンセラーとクライアントとの関係は治療関係を前提としている。一方、マイクロカウンセリングやヘルピング、コーヒーカップ方式は治療関係とは異なる、より一般的援助関係を前提としている。かつて、國分博士は、カウンセリングと心理療法の区別を提唱した。その意味は、治療関係からフィールドを拡大する意図があったのではないかと考える。

また、この三者に共通する、かかわりという要素が共感的理解、自己一致、受容をベースとしていることは忘れないでおきたい。カウンセリングは、このかかわりのうえに成り立っている。